トランス脂肪酸、WHOが世界的に廃止を計画。

更新日:

2023年までにすべての食べ物からトランス脂肪酸を取りのぞく

脂質は、たんぱく質や糖質と並び、生命の維持に欠かせない栄養素の一つです。体脂肪として体温を保つのを助けたり、筋肉や臓器を衝撃から守るクッションの役割を果たすほか、細胞膜、血液などの構成要素となります。

脂質は、炭素、水素、酸素が結合した「脂肪酸」によって構成されています。ひとくちに「油脂(脂肪)」と言っても、構成する「脂肪酸」のタイプによって違いがあります。脂肪酸は、まず「二重結合」があるかどうかで、大きく「不飽和脂肪酸」と「飽和脂肪酸」に分けられます。

オリーブ油やサフラワー油、魚の油は不飽和脂肪酸の割合が高く、一方、バター、ラード、ヘット(牛脂)パーム油やヤシ油は飽和脂肪酸を多く含みます。

「多価不飽和脂肪酸」や「一価不飽和脂肪酸」を多く含むヘルシーな油脂(魚やアボカド、オリーブオイル、ナッツなどに含まれています)は、身体がホルモンを作り、エネルギーを生産し、栄養素を吸収するために必要ですが、人工の「トランス脂肪酸」(主に加工食品に含まれています)をとると、命に関わる病気のリスクが高くなるのです。そのため、世界保健機関(WHO)は2023年までに、世界中のすべての食べ物から人工のトランス脂肪酸を取りのぞく予定だと明言しています。

2003年に、デンマークが世界で初めてトランス脂肪酸を禁止。その後、間もなくアメリカが続きました。2015年には、アメリカ食品医薬品局(FDA)が科学的な証拠を見直して、人工のトランス脂肪酸としていちばん多い形態の「部分水素添加油脂(PHO)」を取るのは、「概して安全とは認められない」と決定。食品メーカーには3年の猶予が与えられ、2018年までにそれぞれの製品が1回分当たり0.5グラムを超えるトランス脂肪酸を含まないようにレシピを変更しなければならないことになりました。

でも、低所得国や中所得国の多くは、まだ食品にトランス脂肪酸を配合し続けていて、WHOによると、そのために50万人以上が、心臓と血管の病気で亡くなっていると報告しています。

WHOの公式声明で「トランス脂肪酸は不必要な有毒化学物質で、命を奪います。世界中の人々がそのような物質にさらされ続ける理由はありません」と公言しています。

 

トランス脂肪酸とは何か?

トランス脂肪酸にはふたつのタイプがあります。自然に発生するトランス脂肪酸と、人工のトランス脂肪酸。食肉と乳製品を提供してくれる動物(乳牛のような)は、消化器の中で、自然に少量のトランス脂肪酸を作ります。結果的に、その動物から作られる食べ物には微量のトランス脂肪酸が含まれることになります。

しかし、アメリカ心臓協会(AHA)によると、この天然のトランス脂肪酸が人間の健康に与える影響を判断するには、まだ十分な研究が行われていません。

でも、人工のトランス脂肪酸は別物です。このタイプは、「水素添加」と呼ばれる方法で人工的に作られます。

FDAによると、「水素添加」とは、水素分子を加えて液体の油(植物油のような)を個体の脂に変換するプロセス。その結果できるのが、先ほど槍玉にあがった「部分水素添加油脂(PHO)」なのです

 

どうしてトランス脂肪酸を食品に加えるのか?

PHOは、クッキーやクラッカー、ポテトチップス、コーヒークリーマー、それにフレンチフライやドーナツ、ファーストフードなどの揚げ物といった加工食品に、最も多く使われるタイプのトランス脂肪酸です。

AHA(米国心臓協会)によると、1990年より前にはトランス脂肪酸が健康に与える影響についてごくわずかしか知られていなかったため、安価で使いやすく、長く保存できて、食品がおいしくなるという理由で、食品メーカーが利用するようになったと言われています。

フライドポテト

 

トランス脂肪酸はどのような仕組みで健康に影響するのか?

トランス脂肪酸を多く含む食品は、加えられている糖分とカロリーが高い傾向があるため、体重増加と2型糖尿病につながりやすくなるという危険があると言われています。また、心臓にもよくありません。

『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』誌で報告された2015年のカナダの分析研究では、トランス脂肪酸が健康に与える影響を調べた数カ国の研究20件のデータを分析した結果、人工のトランス脂肪酸を取ると、すべての原因による死亡率が34%増加し、心臓の病気による死亡率が28%増加、心臓の病気になるリスクが21%増加すると判明しました。

でも、どうしてそれほど危険なのでしょう? 「トランス脂肪酸はLDL(つまり「悪玉」)コレステロールを増やすため、動脈が詰まりやすくなります(LDLコレステロールが多すぎると、血管の内側にたまって動脈硬化が進行)。

同時に、HDL(いわゆる「善玉」)コレステロールを減らしますから、余分なコレステロールを肝臓に戻して身体の外に排出する機能が低下します(HDLコレステロールは、余分なコレステロールを肝臓に運ぶはたらきをしています。そのため、血栓ができやすくなり、心臓発作や脳卒中につながるだけでなく、トランス脂肪酸は血管の内側も傷つけるため、血管の正常な機能にも障害が起きるそうです。

さらに、トランス脂肪酸は少なくともふたつの炎症マーカー(炎症のレベルを示す物質)を増加させます。炎症は現在、糖尿病から心臓の病気、メタボリックシンドロームまで、多くの慢性病を推し進める重要な要素と見なされています。

幸いなことに、トランス脂肪酸を禁止すると変化が表れるという研究結果があります。有力医学誌『JAMA』の心臓学専門誌、『JAMAカーディオロジー』誌で報告された研究で、2002〜2013年のニューヨーク州公衆衛生局のデータを分析したところ、トランス脂肪酸を規制した郡では、規制していない郡に比べて、心臓発作と脳卒中による入院が6.2%減ったというもの。ニューヨークがレストランでトランス脂肪酸を使うことを禁止した直後の2007〜2011年に最も大きく減少したそうです。

 

日本ではまだまだ規制が弱い!

世界中でトランス脂肪酸の身体に及ぼす影響が叫ばれている一方で、日本はどうかというと、相変わらず、マーガリンが公然と売られれいます。

コンビニで売られているパン類やスイーツ類にはほとんどマーガリンやショートニングが入っています。

政府は、微々たる量なので健康被害が出るレベルではないと考えているようで、大規模な規制の動きは見られていないように思えます。

最近は自主的にマーガリンやショートニングなどのトランス脂肪酸を使わずに作ったパン類やケーキ類を売る店も増えてはきています。その一方で、新規オープンのお店がマーガリンやショートニングを使用した製品を販売しているお店もあります。

食の安全性が叫ばれているにもかかわらず、いまだに平然と身体に害がある物を販売しているお店があることに驚きを隠せません。

この記事に興味、関心を持たれた方は、身体に安全、安心な食品を食べたいと思っている方でしょう。そう願う私たちは自主的に商品の材料を吟味して、食品を選んでいきたいものです。

 

ショートニング
トランス脂肪酸の最たるもの、それがショートニング!

  ショートニングは、主として植物油を原料とした、常温で半固形状(クリーム状)の、食用油脂です。 マーガリンから水分と添加物を除いて純度の高い油脂にしたものと考えてよいようです。 パンや焼き ...

続きを見る

 

-食・環境問題
-

Copyright© バイオレゾナンスセンター横浜 , 2022 All Rights Reserved.